2003~2020年度の川崎医科大学衛生学の記録 ➡ その後はウェブ版「雲心月性」です。

川崎医科大学 同窓会報

2003年 秋

  私が在籍しました学年は,附属高校の3期,大学の6期,すなわちその入学でどちらも全学年が揃った節目の学年にあたります。今は昔,生坂で計5年間の寮生活を過ごし,世間知らずなままに試験に通り,そのまま基本的には大学に居続けて,途中からは大別すると基礎医学系(衛生学は大学の機構上は応用医学分野で,臨床系と基礎系の中間に位置づけられておりますが)の教室でお世話になり,普段は教室の数人のメンバーとの会話のみ,もっぱら培養細胞に語りかけたり,その日の実験の成否に合わせてブツブツと独りごちている生活となって,もう,世情の機微からは隔絶された世界に生きているようになってしまっております。

  そのような私が,日常の診療の過程の中で地域に貢献され,あるいは大学や大きな病院の中で,日々,医療の発展に寄与すべくご活躍の同窓の先生方に対して,改めて何を申すまでもなく,また,多くの同窓生の方々は,ある程度,大学からは距離を置かれた上で,現在の大学の状況をお見つめになっていらっしゃり,それならばこそ,いくつかの本学の抱える問題点とか改善すべき点をしっかりと把握されておられることと存じますが,留学を除くとどっぷりと学内に浸ってしまって来た私にとっては,自分では解らない部分で潮流の赴く先が決まっていっていく大きな機構について語るべき言葉もなく,きっとその流れ自体も見えないままに,あるいは既にその奔流に振り回されてどこかの岸辺で留まっていたり,支流に迷い込んで滞っているのかも,あるいは青息吐息でギリギリ本流に乗っているのかも判然としないままに,ただ,徒に日々の実験や授業や会議やらに,身を置いているだけというのが実情のようにも感じております。

  果たしてこのような心情の吐露は,きっと同窓の先生方からの厳しい叱責の標的となることでしょう。「母校に残った者,母校の発展のために精一杯努力せよ」,「君たちがやらずに誰がやる」,「それが残った者の義務であり責任だ」というお叱りの声が耳に届いてくるようです。願わくは,このような誌上をお借りしまして,新たなる大いなる決意を表明したい,あるいは,これから10年を見てくださいと大見得を切ってもみたい。しかしながらそれは能わぬ夢,少なくとも私自身は,ともかくも,衛生学教室の研究テーマの充実を図るだけでも精一杯,若輩微力の私にとっては,私を含めて教員3人の小さな教室が抱える研究と,そして,大学は勿論,短大等の学園関連施設への授業,昨今,導入されてきておりますチュートリアル授業や小グループによる演習のチューターとしての役割,これらを過不足なくこなしていくことだけでも,なかなか,大変で,本来求められる処を充たし切れていないのが現状なのです。

  加えて,文科省の方針で,4年生から5年生に進級する際には,共用試験を受ける義務が生じることによって,あるいは,コアカリキュラムを中心としたチュートリアル授業の導入による思考できる学生の養成という方針に従って,1~4年生のどの教科も時間数の削減が起こってきており,また,卒後研修義務化に伴う国家試験日程の前倒しに準じた卒業試験日程や国試対策集中講義の早期化等の問題も表出してきており,大学のカリキュラム自体が固定するものでなく,本邦の医学教育の方向性に合わせた形での変革を余儀なくされている現況の中で,私どもの教室として与えられているノルマ自体の変容に対して,年度毎に充分なことを出来たかどうかを確証する間もなく,次の事態に向かって対応せざるを得ない状況を強いられております。

  既に,親子2代に渡って同窓生となっていらっしゃる方々,また,ご子弟が在学中の同窓の先生方も多くいらっしゃいますが,それでは,本学の伝統をどのように守るべきなのか,あるいは,伝統そのものが確固たるものとして築かれているのか,逆に今はそれが蔑ろにされているのか,大学自体が変革を恐れず腐敗を生むばかりの停滞からの脱皮を図っているのか,新たな伝統の構築に向けて邁進しているのか,こういったことは,学内であくせくしておりますと,あるいは全く見えていないのかも知れません。但し,今,在学者として云えることは,ここ数年で,元気の良い先生方が多く赴任されてこられたこと,そして兎に角,学生諸子もそのような闊達な先生方の姿に触れることで,大きな目でみてみますと,勉学に対する意欲なり活力を湧かせてくれているようであることです。思えば,私などが学生の頃も,「なんだかよく分からないけどこの先生は凄い」って感じさせてくださる先生方が多くいらっしゃいました。私自身は到底そのような域には達することは出来ませんが,大学全体に活力がみなぎることは必要なことだと思っております。但し,その活発さは,反面,競合や拮抗を生じてきており,確かに,教室によっては卒業生が駆逐されてしまいがちになる状況も起こってきております。これには勿論卒業生はその大半が,どこかで実家なりの後継としての側面を有していることも作用していることは否めませんし,あるいは,そこで駆逐されるべき程度の卆前卆後の教育に曝されてきていたのかも知れません。もし,今を変革の時期と考えるならば,現在,在学されてらっしゃる元気の良い先生方の影響が在校生や卆後間もない同窓生に良い作用を齎し,今から巣立っていく同窓生が,新しい歴史を刻んでいってくれるような方向に進めば嬉しいことだと思っております。しかし逆に,個々の活発さを統一した方向性に収斂させ切れずに,大学自体がズタズタに切り裂かれるのかも知れません。

  それでも,同窓生諸氏の皆様には,母校の現況に対して,それでもその良いところを見つけてそこを伸ばそうというおおらかであたたかいお気持ちで接して頂き,ご指導,ご鞭撻を頂戴できれば幸いと思っております。私は,取敢えず,教室でやっております「珪肺症を中心とした環境物質による自己寛容破綻の検討」と「骨髄腫細胞をモデルとした悪性細胞の発生・進展に関る因子の抽出」の仕事を細々と行っていきます。もし,このようなテーマに関連のあります症例や何かがございましたら,お気軽にメールでご連絡ください。ちなみに,珪肺症症例では,同級の同窓生,備前市の草加先生にも大変お世話になっております。

  なんだか冗舌な取り留めのない文章になってしまいました。この誌上を借りまして,同級生への近況報告ですが,晩婚でした私は,昨年,第二子・長女が誕生しました。写真としてその時のものを使わせていただきます。それでも元気にやっております。また連絡を下さい。

  同窓の皆様,今後とも何卒よろしくお願いいたします。